今日でお姉ちゃんたちの発掘隊が失踪して既に一ヶ月が経とうとしている。それなのに、私たち家族に

は、捜索に関しての政府からの報告や連絡っていったものは何も入ってきていない。いったい、どう言うこと

になってるっていうの?

 お姉ちゃんは生きてるのかな。

 最悪な結果を想像しては、今日も眠れない夜が訪れる…

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 一ヶ月前───

「ねえ、美沙!あたし、発掘隊のメンバーに選ばれたのよ!!」

 いつもは勉強の事でしかめっ面をしているお姉ちゃんの顔に、今日は久しぶりに喜ぶ笑顔があった。それ

はお姉ちゃんが「調査隊説明会」へ出かける朝のことだった。私たち家族はそんなお姉ちゃんの顔を見なが

ら久しぶりに家族団欒の朝食を幸せな気持ちで味わった。

 それから一週間後のコンカトス半島へ出発する前日。

 お姉ちゃんは今までに見たこともない新しい遺跡が発見されたという話に魅せられていた。私に話してく

れるそのほとんどは、その遺跡のことばかりだった。もちろん、私にはそんな難しい話なんて理解できない

るはずもないし、相槌を打つことぐらいしかできなかった。

 私とは2歳違うお姉ちゃん。

 よく姉妹ゲンカしていたけど、離れるって気持ちになってみるとそんなお姉ちゃんのことでも少し寂しく感じ

た。

 そして、お姉ちゃんはその旅路に就いてまもなく消息を絶ってしまった…

「よう、桜木ンとこのねーちゃん行方不明なんだってな?」

「なに言ってンのよ、あの遺跡バカ教授が企画した遺跡発掘調査隊のメンバー全員が行方不明なのよ!」

 クラスメートたちはマスコミの騒ぎに、興味本位からそんな話をしていた。私は教室の端の席に腰掛けて、

コンカトス半島のことを調べていた。

お姉ちゃんを捜しに行きたい!!

 正直な気持ちだった。両親の落胆振りは実の娘の私ですら気の毒になるぐらい落ち込んでいた。両親は

私と違ってデキの良いお姉ちゃんに期待を一心に注ぎ込んでいたから、それも無理のない話なんだけど。

「よう、美沙!なんだよ、元気にないな…って、ま、無理ないか…スマン」

 私の気持ちとは正反対の明るい表情で声をかけてきたコイツは幼馴染みの椎名健太。

「ねえ、ケンタさぁ。アンタのお父さんって、家の仕事以外に遺跡の発掘とかしてたよね?」

「えっ?ああ、そっちは趣味でやってるよ。まぁ、自慢できるような発見はまだだけどな…で、それがどうか

した?」

 健太は自分の机にカバンを放り投げると、私の目の前の席に腰を下ろした。そんな健太の問いを無視し

て、私は分厚い本を食い入るように見入っていた。

 そうか、健太のお父さん…何かこの半島のこと知ってるかもしれないわ。

 そう思っていたら、健太の方から話しかけてきた。

「あのさぁ、そんな、しかめっ面して本を読んでも何もわかりゃしないぜ。それに…」

 そう言って健太が私からその本を取り上げる。私は取り返そうと、健太の腕にしがみついて叫んだ。

「返して、ケンタ!!」

「やだね。お前、ここ二、三日ずっとこの本とにらめっこしてるんだぜ?そりゃ、お前の気持ちを考えりゃ誰だ

って何も言えねーけどさ。授業中までこれ一色じゃ、あんまし先生の印象良くないぜ?」

 そう言って健太はパラパラと数ページをめくって見た後、その本を閉じて私の机の上に静かに置いた。

「相談、何でものるから…そんなに思いつめるなよ。…そんなんじゃ、オレ…」

 そこまで言いかけた健太の言葉を授業の予鈴が遮った。

「…と、んじゃ、この話しの続きは昼休みに屋上でしような!」

「あっ、ケンタ…」

 そうか、健太のヤツ…私のこと心配してくれたんだ。

 でも、ゴメンね。今はお姉ちゃんのことしか考えられないんだよ。

 その日、午前中の授業は健太の忠告を聞くことにした。

 半島のことを少し忘れて、たまには授業を受けるのもいいかもしれないと思ったから。

 そうだね、一人で考えるより、いないよりマシな健太がいるんだったわね。

 まあ、健太を宛てにはできないけど、アイツのお父さんはあの博士と知り合いだって聞いたことあるから、

健太を通して話を聞かせてもらえるかもね。

 私は早く授業が終らないかと思っていた。

 そんな私の気持ちとは裏腹に、外には呑気な白い雲がゆっくりと流れていた。

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Update:2002.2.23