扉が吹き飛ぶくらいの勢いで開けられると、そこからは意外な人物たちが転がり出てきたんだ。 「美沙っ!!!」 力なく立ち上がる美沙がよろよろと声のする方を見つめている。 「ケン・・・タ?」 その時、美沙の後から男と何かおかしな格好をしたヤツらが吐き出された。 男はすぐさま立ちあがると、ヨタヨタと美沙に近づく奴を蹴り飛ばしながら、美沙の腕を掴んで最も距離を 置ける場所へと逃げて行ったんだ。 「助けて・・・ケンタぁ!!」 美沙が泣きそうな声で俺に助けを求めている。 今にもここから飛び降りてあいつらの中へ飛び込んでやりたい衝動を必死で堪える。 クソッ、じりじりと幅を詰めるそいつらを指をくわえて見ているだけしかできないのか!! ガシャン、ガチャ! いきなり俺の横でジョンがライフルを構えた。 セミからオートに切り替えるとその銃口をヤツラに向ける。 「おい、バカ!こんなに距離あるってのに間違って美沙達に当るんじゃねぇか!?」 俺がそのライフルに飛び掛ろうとした瞬間、ハンスの奴が俺の腰に飛びついてそれを止めた。 「ケンタ、駄目だ!今、ジョンを信じないと、結果的に美沙ちゃんもカルロスもあの化け物みたいな連中に 襲われちゃうんだよ!!」 そう言った言葉に、俺はハッとなる… 確かに数十メートルと無い対角線上では、カルロスが必死に美沙をかばいながらも最後の抵抗をしている 様子に見えた。 「さぁ、来いよ!」 奴は俺よりも小型のサバイバルナイフでそいつらを切りつけては跳ねのける動作を繰り返す。奴も少々の 武術を心得ているのか、ナイフを器用に使いながら、肉体を武器とした攻撃で何とか事をしのいではいるよ うだった。 だが、ヤツラもそんなカルロスの攻撃に怯んではいない。 何度倒れても決して動かなくはなったりはしないのだ。 と、表現するよりもナイフの傷でも絶命しないとなると打つ手無しといった感じに思えるのだが…… "思う"んじゃなくて、そのままだ。 俺の頭がパニックでどうかしてなきゃ、奴等は"死なない"ということになるんだ。 「チッ、ジョンの奴、何してやがるんだ!!おい、早く援護しろよ、このうすらボケ!!」 美沙はカルロスと背中合わせに背後から襲ってくる奴等を"自慢の回し蹴り"でバンバン蹴り倒していた。 だけどさすがのオテンバ娘の美沙も、タフな奴等を相手に抵抗がそう長続きするはずも無く、やがて肩で大 きく息をしはじめた。美沙がそのくらいあってくれたおかげで自分に襲いかかってきたらキャーキャー騒ぐ女 よりは幾分かカルロスは助かっているに違いない。 たとえば俺の隣でブルブル震えてやがるハンスだと、かなり苦戦しているだろうな。 「そう、慌てなさんなって・・・」 ようやく準備が整ったのかジョンが狙いを定めると、この場所から狙撃を始めたんだ。 ガガガガガガガガッ!!!! ジョンが銃の引き金を引くと、銃身から勢い良く薬莢が飛び出しながらその銃口から出て行く弾丸が見事 なまでにそいつらの醜い姿をさらに醜い肉塊へと変えていくのだった。 とっさにカルロスが美沙を抱きかかえるような感じでその場から離れた。 ぐちゃぐちゃに潰れる人の形をしたモノたちが辺りを汚い肉片で汚していく。 「さぁ、立つんだ美沙!ここから脱出だ。ほら、ケンタも無事だったんだから、彼の元へ行きたいだろう?」 いきなりの事で美沙はちょっとしたショック状態だったが、カルロスの呼びかけで正気を取り戻したのか、 すぐさま立ち上がるとこちらを見てニコッと笑ってみせた。俺には美沙を抱かかえるように飛ぶ必要があった のかと、ちょこっとだけカルロスの行動に納得いかなかったが、美沙が無事ならそれで良いと言うことにして おいた。 ああ、くそっ、こっから飛び降りてぇ!! だけど、どう見たって美沙の居るそこまでの高さは数百メートルある。 俺の体がいくら丈夫でも、こんな高さから飛び降りたりすりゃただじゃ済まないだろうな……。 普通は死んじまうっての。 「おーい、とにかく俺達はこのまま地下道で遺跡へ進むから、合流地点は『遺跡入り口』ってことでいいだろ う?」 カルロスがそう叫ぶと、美沙もこっちを見ながら両手を振ってはしゃいでいる。あの様子だと、何処も怪我 をしては居ないようだから、ひとまずは安心してもいいようだな。 「ああ、それでいい!!また会おうぜ!!」 ジョンがそう言って腕を上げた横で、俺はとっさに自分の持ってきていたリュックから自分のナイフだけを 取り出した。 「持っていけ!!銃と食い物だ!!」 植物のツタが集まって作りあげた天然のクッションの上に俺のリュックが"ボサッ!!"と落ちた。 「ケンタ!!」 カルロスが俺の方を見た。 俺は自分の大ぶりのサバイバルナイフを見せると、銃は必要ないと言う仕草を見せた。 初めて会うカルロスという男に美沙を任せる事が不安が無いとは言い切れなかったが、だからといって丸 腰ではアイツを守る事もできないだろうし、食い物なんかも持っていそうにない様子だけに、美沙の事だけを 考えてリュックを投げたんだ。 「大丈夫さ、ジョンたちも居るしなーっ!」 俺はそう叫んだ。 カルロスはリュックから顔を出していたジョンと同じタイプのライフルを取り出してその弾倉を確認した。 弾は十分に入れてある。予備のマガジンもリュックに入れてあった。 「ケンタ、大丈夫なの?」 美沙がこっちに向かって心配そうに叫んでいる。 「何心配してんだよ?お前らこそ何も持ってねーんだろ?」 俺が"心配ない"というように叫んで答えると、美沙も納得したのか『ありがとう、ケンタ!!』と元気良く返 事を返してきた。 「じぁ、日が沈まねーうちに着きたいからそろそろ行くぜ!!」 ジョンはそう叫ぶとカルロスに合図した。 カルロスはサッと手を振ると美沙を連れて出てきた扉の中へと消えていった。 また、美沙を助けられなかったな……俺。 いや、まだだ。 まだ助けなきゃいけないのは美沙だけじゃないもんな、美沙の姉さんも同じなんだから……
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Update:2003.1.28