「助かったぜ。俺の仲間もかろうじて生きてるようだしな。美沙のボーイフレンドのおかげでこっちも物資を手 に入れることができたし…」 そんな言葉を私は上の空で聞いていた。 結局、私は彼が一緒にこの半島に来ている仲間の人達とは合流する事ができなかった。しかも、見たこと の無いような怖いお化けのような人達がイキナリ現れて襲ってくるんだもん。いくら私でも"驚いちゃった"な んて舌を出して笑えるほどの余裕は無いよ。それよりも合流のチャンスが無かった事の方がショックは大き かったからなぁ… 本音言うと、ちょっと後悔してる。 ホントのところ、私にも"お姉ちゃんは生きていないんじゃない?"なんて気持ちが起こり始めてる。それ に、あまり良く知らないカルロスを信じても、健太ほど信用できる相手じゃないんだし……ってね。 結局、さっきも二人っきりだと生き残れていたかも解らない状況がこれから何度か起こってもこれ以上の 対応なんてきっとできそうにないもの。 どうして健太と一緒の時はこんな気持ちになったりなんかしなかったのに、今はこんなに気持ちが乱れち ゃうのかな。 幼馴染みだから? それとも……もう、考えるのはよそう。 だって、そんな気持ちを知ったって健太と再会できるかどうかなんて今は解らないから。 それにこの先果たして健太達と合流できるって事も不確かなことなんだし、何よりも大勢で襲われれば ……多勢に無勢ってなっちゃったら、二人で抵抗できるわけないもん。 さっきの得体の知れないモンスターに襲われて、偶然あの場所へ逃げ込んだから助かったものの、あの ままあんな所にいたらって考えただけでもゾッとするわ。 「まださっきの事を考えてるのかい?」 「えっ?ええ、まぁ…ね」 それはそうでしょう? 私は今まではごく普通の女子高生だったのに、こんなジャングルにやってきていきなりサバイバル状態な んだから。その上、奥のヘリポートみたいな場所であの変なヤツと戦うなんて思いもしなかったわ。 そう、私達は殆ど怪物に押され気味のままでドアを強引に押し開けたんだから。 あの広場に踊り出た私達はその場所の何処にも逃げ場が無い事を知って、『もう駄目!!』ってそう感じ た時だったかな? 「美沙っ!!」って健太の声がしたんだよ。 その声を聞いた途端に私の心の中で『生きたい!』って気持ちがこみ上げて、気がついたら私あの怪物 相手に素手でも戦えてた。 不思議な気持ちだったの。健太の生きてる姿が私を前へ前へって突き動かしたんだよ。 でも、そんな事考えてたらちょっと切なくなっちゃった。 「はぁ…どうして上へ登る階段が付いて無かったんだろ……」 健太達と別れた私達は遺跡へと向かう為にもう一度あのトンネルに逆戻りしていた。あの高さだとロープ で上るって事もできない。そもそもその長さのロープを健太達が持ち合わせていなかったから。 「ケンタ……とか言ったけか?アイツ、意外と男らしいんだな」 カルロスが銃弾の残量を数えながら私にボソッと言った。 「えっ、ケンタが? そうね、昔からああいうヤツなんだよね。意外と今ごろ猛獣に襲われて、あんなナイフ をふり回してる頃なんじゃない?」 そう言って私は健太のリュックに付いていたキーホルダーを見つけると、それを手に取った。小さなペンギ ンは、健太みたいに毛を逆立ててキツイ目付きで私を睨んでる。何よ、目つきまで何だかアイツに似てる じゃない… 修学旅行先で健太に私が買ってあげた物。 健太のヤツったら、こんな所まで持って来てたのかしら。 まったく、こっちを見ている目つきがホントにアイツそっくりなんだから。 思わず私の顔がほころんじゃったじゃない。 「そうだ、リュックから外して持っておこう。なくしたらせっかく私の貴重なお小遣いを無駄にするものね」 誰に言っているわけでもない独り言を言うと、健太のリュックからキーホルダーを外し、私はズボンの腰あ たりに吊るした。 さてと私もリュックの中の物を机に並べて整理しようかな。 「ここから抜け出すには二通りの進み方がある。ひとつはこのまま美沙とここの地下道を通り抜ける方法が 一つ。もう一つは地上に出て歩く方法だ」 そう言って机の端に地図を広げた。 「ここは南西に伸びる地下道で、数箇所に外へつながる昇降口が設けられているはずだ。大体、1〜2キロ ってとこだろう。面白い事に地上にも同じように通路に沿った道が用意されているから、地上に出るにしても 出ないにしても遺跡までの距離は同じぐらいだと考えてもいいだろうな」 そこまで言ってカルロスが私の顔を見た。 「美沙の体調次第でいいから君が選んでくれ。それに、俺はどちらを進んでも同じだからな」 「それじゃ、私にとっても同じ事なんじゃないの?だって距離は同じなんでしょ?」 そう言って、私は自分のリュックの整理が済んだ持ち物をしまいながら答えた。 「まっ、細かい事を言えば多少の違いはあるだろうけどな」 「その前に、今の持ち物でこの先の事を考えようよ。第一、この薄暗い地下通路を通って目的地まで行ける だけのバッテリは残ってるのかしら?」 私は充電式の懐中電灯を手にしながらニッコリ笑って言った。 「そうだな、そう言う問題もあったな」 「"そういう問題もあったな"じゃないのよ?いい、現にこの先にバッテリを充電できるポイントがあるってわけ じゃないんだから、ここは一旦外へ抜け出す方が得策じゃない。勿論、日が沈んじゃえばどちらにしてもバ ッテリの問題は同じなんだけどね」 そう言って私は近くの椅子に腰掛けると背伸びを一つした。 「美沙の言う通りだな。だけど、夜に行動するならこのまま地下通路を行く方が危険性は幾分か少なくなる ってことか……」 「そう言うこと。但し、あの化け物が集団で襲って来ないって保証は無いんだけど…ね」 「そうだな……」 私達は少しの間、沈黙していたけどカルロスのダイバーウオッチの針はまだ日が真上に昇るまでもう少し あることを示していた。 「とにかく考え込んでたって仕方ないわ。時間から考えて、地上に出ようか」 私はそう言ってリュックを肩に掛けると地上を目指す為にあの薄暗い通路へと出る扉を勢い良く開けた。 そう、ジッとしていても"死"は私達に近づいて来るんだもの。 同じ来るんならできる限り悪あがきしてあげる。 うら若き乙女の可憐な命をみすみす散らせたりしないわよ!!
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Update:2003.2.4