「ええっ、お前なに考えてんだよ?」 牛乳パックから伸びたストローをめい一杯噛みながら、健太が私の顔に向かって驚きの声を上げる。 「きゃっ!バカ!きたないわね!!何か飛んだよケンタ!!」 そんな私のことはお構いなし!って顔でますますその距離を近づける健太。 「ちょ、ちょっと!いつからアンタ、私にそんなに近づける身分になったのよ!!」 「って、お前。今、自分が言ったことがどういうことかわかってんのか?」 健太は飲み干した牛乳パックをグシャッと握り潰すと、食べ掛けのパンを口にほうり込んだまま話し始め た。 「あむ、な、おまい…がな…」 「ケンタさぁ、食べ終わってからにしない?」 私は自分が飲み掛けていた牛乳のストローに口をつけると、ぷいっと横を向いた。 「わりぃわりぃ、んでもよ。コンカトス半島に行くのはアブねーんじゃない?」 「まぁ、そりゃ、お姉ちゃん達が行方不明になったところに行くなんてフツーに考えればそうなんだけどね。 ほら、もうすぐ夏休みだし、一ヶ月もあればさ、あんな宛てにできない連中よりはもっとマシな情報を見つけ られるかもしれないじゃない?」 そこまで言うと、昼食をお腹につめ込んだ健太はゴロンッと仰向けに寝転んだ。 「つーかさ、美沙。お前ホントわかってないんだよなぁ」 健太は目を閉じながら話しを続ける。 「何を?」 「朝さぁ、オヤジのこと話してただろう?オレも、良くオヤジについて手伝ってたんだけどさ。今のお前が考え てるような甘いもんじゃねぇぜ」 そう言っておもむろにシャツの袖を捲り上げながら、私にその腕を見せた。 「この傷はな、今まで見たこともない毒蜘蛛に噛まれて、いきなり腐れやがった。仕方ないってんでここの 肉を削ぎ落としたんだぜ。ジャングルってのはそれぐらい危険なんだ。シロウトのお前に行けると思うのか よ?」 健太の腕の、筋肉の部分が少し窪んでる。 そう言えば健太が小学生の頃、おじさんと海外旅行に行った時に毒蜘蛛に噛まれて大怪我したって聞い たことがあった。でも、それは十年も前の話だって言うのに、まだ健太の身体にその傷痕はハッキリと残っ てる。 「…っとに、お前…一人行かせられっかよ…そんなトコ」 健太が蚊の鳴くような声で愚痴る。 「…ゴメン」 「……」 不意に風で飛ばされそうになったパンの包み紙を掴みながら、健太が真剣な表情で私を見た。 「真面目な話しで言ってるんだろ?本当はまだ決まってないんだけどな…」 健太はポケットから一通の手紙を取り出すと、それを私に差し出した。 「何これ?」 「例の遺跡の再調査隊にウチのオヤジが選ばれたんだ。だけど、今は稼ぎ時だから行くことができないっつ ーか行かないらしいんだ」 そう言って、さらにもう一通の封筒を今度は枕にしていたリュックから取り出すと、それも私の方に差し出 した。 「航空券が二枚入ってる。ホントだったら、オレとオヤジが行く予定だった…」 その眼差しが何を言いたいのか、私はすぐに理解できた。 それを健太が確かめているように思えたから、私は素直に頷いた。 「じゃ、もうわかるよな。行くか、行かないかはお前しだいだ。良く考えて答えをだせばいいから」 そう言って私の頭に手をポンポンと何度か乗せると、屋上に私を残したままで健太は教室に戻っていっ た。 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ |
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Update:2002.3.3