「おい、美沙…大丈夫か?」 健太の呼ぶ声で私は気付いた。 生きてるの? 「しっかりしろ…どこも痛くないか?」 健太はどこから集めたのか、火をおこして冷え切っていた私を暖めてくれていたようだった。その炎の明か りに照らされて、そこが砂浜の上だと言うことはわかった。目の前にはアルミでできたコップや、ヤカン、そ れに何かしらのカン詰めまで用意されていた。今しがたこの浜に上陸したと言うのに、健太はどうしてそん な物を手に入れられたんだろう? 「ケンタ…私達…助かったの?」 ゆっくり起き上がりながら、私は健太の方を向いた。 「んっ、あ、まぁ…ね」 健太は視線を反らしながらそう答える。 器用に作った物干し台のようなものに衣類を掛けていた。まさか数時間でこんな事までできるはずがな い。常識的に考えても無理な事ばかり起こっていた。 「私…どれくらい、気を失っていたの?」 「あっ、まる一日かな…、ちょっと心配したぜ。息はしてるし、何処も怪我がないようなのに、どんなに呼んで も目を覚まそうとしないからよぉ、もう駄目なんじゃねーかって思った時もあったけど…」 健太は小皿にコーンビーフとカンパンを少し乗せ、その他の分は全て私に差し出した。健太の倍は食べ 物が盛られている皿が私の前に置かれた。 やだ、こんなに食べられないわよ。 「顔色悪いから、たくさん食べて、早く元気取り戻してくれよ」 そう言って、少し日に焼けた顔で白い歯を見せて笑う健太に、力無く笑い返す私は、それでも差し出され たものをぺろりと平らげた。少しはこんな状況だから健太に遠慮はしていたけど、残そうとすると健太のヤ ツがしかめっ面するし、逆に頬張って食べてるとニコニコしてるんだもん、自然と全部食べてしまっちゃうわ よ… 「ひゅー、眠り姫様もきっと王子のキスの後でこんなに沢山食べたんだろうな…百年の恋も一瞬で冷めちゃ ってたりして」 そんな冗談を言いながら、私を笑わせる健太。 でも知ってるよ、健太…本当は私に心配させないようにしてるんだよね? ここはあのジャングルなんだし、健太だって怖がるような生き物も沢山いるだろうし、これから私達どうなる んだろう? お姉ちゃん達は今、何処に居るのかな…。 「…くしゅん!」 あれ?私、何だか薄着してない? 「ああ、わりぃ、お前の服ずぶぬれだったから、干しててわすれてたよ」 気がつけば、私は下着だけの姿にされていた。まさか、私って…一日中こんな格好にされたままだった の? 怒りで手がプルプルと震えていたけど、ケンタを怒鳴る気力はどうやら残っていないみたい。それに…今、 こうしていられるのもケンタの勇気があったからのことだし。今回だけは大目に見とくわね。 「今夜からでも出発するの?」 「薄暗い時はじっとしておいた方がいい、それにお前だって今気がついたトコなんだし。この際、ゆっくり休ん で明日の朝一で出発しよう。」 「そうね…そうしましょう」 そういって見た健太は、安心したように口元を緩めると、地図とにらめっこを始めた。 そんな私に突然、健太はスプーンで明るい星を指した。正確にはそこには十字になった正座「南十字星」 があった。 「あれがあそこにあるって事は、あっちが南だと言う事になる…つまり、この地図の南をその方向に向けると ここが現在地になるはずだよな…」 健太は遺跡の真南に位置した海岸に私達は辿りついたのだと説明した。 「じゃ、まっすぐ北上すればお姉ちゃんの居るはずの遺跡に辿りつくわね」 その答えは即答ではなかった。少し濁したような声で健太はさらにその地図の中間付近を指差した。 「この辺は前に来た事があるんだ…」 「じゃ、どう進めば良いか解ってるって事じゃないの?」 健太は首を横に振った。その顔は私が言いたい事を否定していた。 「この辺りは危険な動物が多いんだ! 現地の連中も随分と苦労してるらしいし…そんな場所を美沙を連 れて横断できるはずないじゃないか。まず、無理だろうな、きっと」 そういって地図を置くと、今度はポケットから何かのネックレスに似たような物を取り出した。それはただチ ェーンに鉄のプレートを付けているように見えた。 「美沙も見たことあるよな?クラスの幸助がカッコつけに首にぶら下げていただろう?あれのホンモノだ。コ イツが落ちてたと言う事は軍隊の人間が近くの浜でキャンプして居たと考えられるし、そうだった場合はや やこしくなるなぁ。しかし、だからと言ってここに留まっても安全なんて言えないだろうし…さて、どうするかだ な」 健太がため息をついた。 「とにかくだ、今夜はゆっくり休んでおけよ。明日はハードな一日になるからな…」 そう言うと健太は火の側で薪をくべながら言うと明日の準備を始めた。 |
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Update:2002.3.29