「ちょ…と、話が違うんじゃない!?」

 健太はそんな私の口を慌ててぐと、辺りを慎重に見まわしたしていた。

 いつもとは違う、脱出する時に見せたあの眼差しで見渡す限り木ばかりのジャングルを睨みつけてる。

「どうしたの?」と健太に聞くと、健太は何かの気配を感じ取った様子で慎重に私の耳元でささやいた。

「何かがおかしいんだ…何か居るぞ」

 そう言うと、近くの木に私を登らせるとその後を自分も上った。曲がりくねった木の幹に二人で身体を隠し

ながらじっと一点を見つめる健太の視線の先を見た。

 ガサガサ…。

 音と共に数人の迷彩服を着たアメリカ兵らしい人達が現れた。

「あっ、ケンタ、あれって…んぐぅ!」

 健太が私の口をまたしても強引にいだ。今度は何よ!?

「ありゃ、変だぜ。どう見ても生きてるようには見えないんだけどな?」

 ちょうどその人達が良く見える位置に差し掛かると、私はその人達の服装を見て納得した。というよりも、

そうしない他には術がなかった。

 一人の人は迷彩服を真っ赤に染めて、目はあらぬ方向へ泳ぎながらヨタヨタと歩いている。ナイフでもな

かなか切れにくい草を手で引き千切るように進むこの人達を人間って呼べって言う方がどうかしてそうに思

える。

「ちょ…どう言う事?」

「何かどっかで見たような…何だっけな…そうそう!映画かゲームに出てきたゾンビに似てるんだ」

 ゾンビ…?

 まぁ、そう呼ぶほうが相応しいと思うけど、あの人達がただ怪我をしているだけなら、助かるチャンスを無く

してしまう事にもなる。

 その事をそっと健太に言うと…。

「おい。お前なぁ、あいつ等の目ぇ見たのかよ?ありゃ、普通の人間の目じゃないぜ?」

「でも、私達の居た海岸の方に向かって行ってたじゃない」

 健太が「はぁ…。」とため息をついて私の肩に手を乗せた。

「さっきも言わなかったか?あいつ等は『変』なんだよ。ヘン!!言わないでおこうって思ってたけど、真ん

中へんを歩いてた男は下半身裸で、腹から腸が飛び出していた。そんな男がジャングルを平気で歩けると

思ってんのか!?」

 健太がそういってその兵以外に別の兵が居ない事を確認すると、私達は木を降りる事にした。そして兵士

が通った後の道へ来ると、健太が私を呼んだ。

「美沙、これでも俺の話を信じないのか?」

 健太が落ちていた棒で何かの内臓を突ついていた。

 うえっぷ!!

 私はその異臭のする物を見るなり吐き気をした。幸い健太と違い、私はその内臓が飛び出してた男の

人を見ていなかった事で、想像だけで済んでいた事が幸いしていた。

「だろう?だからヘンなんだって!」

 私へ水筒に入った水を渡すと健太がそう言った。

「ご、ごめん…ケンタの言った通りだ…。」

「…まっ、そりゃいいんだけど。あいつ等どうして海岸に行ったんだろう…?」

 そこまで言うと、健太はハッとしたように私の方を見た。

「もしかして…俺達を探してるんじゃねぇだろうな。だったら厄介だぞ!俺達を狙ってるんだ!!」

 健太の言ってる意味が良くわからない。

「どうしてあんな気持ち悪い人達が私達を狙うのよ?それに、狙われるって…私達、ここに来たばかりじゃ

ない」

「ああ?そう言われれば、そうなんだけどな…でも、明らかに俺達のキャンプしていた場所に進んでいたぞ。

あのまま、まっすぐ進めば間違い無く今夜辺りには俺達の居た海岸に着くだろうな」

 健太は手にした地図を見ながら言った。

 その後、彼らはここへは戻って来なかった。疲れから緊張の糸がぷつりと切れる。

「ねぇ、ケンタ。今、どの辺にいるのよぉ。もう、ちょっとは休ませてよぉ」

 そう言って、ジャングルの太い幹にもたれ掛かる…。

 グニャリ…。

 その感触は冷たく柔らかい…それでいてなんだか生臭い。

「ひっ!?う、ううぅ…!!」

 私は直ぐにその生モノに巻きつけられると、上空に持ち上げられる。さらに口を塞がれた上、身動きすらで

きない…最悪、コイツの身体って迷彩までしてるよ。

 待ってよ、それって私は健太に助けを求める事ができないじゃない!!

「う〜ん、ここは何処なんだろう?」

 健太!!ちょっと、気付いてよ!!

「なぁ、美沙ぁ?ここでまた休んでちょっと…おい、美沙!!何処だ、美沙ぁ!!」

 健太はキョロキョロ当たりを見るだけで私がズルズルと上空に持ち上げられている事に気付いて居ない

様子だった。

「んんっ!!んんぅう!!」

 だめだ、全然声が出ないよう。覚悟するしかないのかしら…。

 そう思ううちに、だんだん意識が遠のいていく感じがしてきた。

 健太のやつ…天国で会ったらヒドイからね!!早く死んじゃえ!!アホ!!

 そんな気持ちで私はその得体の知れない生物に連れ去られてしまう。

 遠くで健太が必死に叫んでたような…気が…する。


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Update:2002.4.15