「とにかくここから出よう」 カルロスの言葉で私達は立ちあがった。 私達は彼が連れ込まれた入り口を横目に見ながら、その先の道を奥へと進ん行くことにした。 そこからジャングルへ出る事もできたんだけど、何もあんな化け物がうろうろするような危険なフィールドへ 足を踏み入れる事も無いよね。 それに、あんな化け物でもかわいい子供を残せる場所に選んだと言う事は、猛獣や外敵が居ないから選 んでいるという事だろうし… まぁ、自信はないんだけど。 私がもし猛獣だったらって考えたら、こんな危険な動物がいるような場所に来たいなんて思わないもの。 そう考えるとやっぱりこの道を行くのがいちばん安全だといえるんじゃないのかな? そんなことを考えている間に、カルロスの光る筒がだんだんと光を失い始めたの。 「おいおい、安物でもいいけどよ、粗悪品はカンベンしてくれよな!」 そう言って完全に光の消えた筒を壁に投げつけながら叫ぶ。 「しょうがないなぁ…これ、使いましょ?」 そう言って、今度は私が小さな筒を取り出してスイッチを入れた。 小さな懐中電灯の光は辺りを照らしてくれるんだけど、二人の行動視界まではカバーできないみたい。 どんなにがんばっても2メートルが限界範囲。 しかもこれまたハッキリとみえないんだよね… それでも頼れるのはこの懐中電灯の光とカルロスが持っていたあのマップだけだっていうから心細くてし かたないのよ。 「ここって何に使われていたトンネルなのかな?」 私は暗いそのトンネルを注意深く歩きながらカルロスに訊ねてみた。 その通路の中央部にはレールが引かれてあって、以前はこんな場所でも何か電車の様な物が走ってい たことを連想させる。 何時まで使われていたのかなんてわかんないくらい錆付いているそのレール。 レール? 何でこんな所にレールがあるの? それに今まで疑問にも思わなかったんだけど… どうしてこの通路が遺跡まで伸びているのかしら? 「ああ、ここの事かい?う〜ん、そうだな…実のところ俺も良く知らないんだよ」 ええっ!? そ、そんな先も解らないで「ここから出よう」なんて言ったの!? 良く言えたものね…この人は。 私はその言葉で頭が痛くなってきちゃったわよ。 ところで健太はどうしているんだろう… あれからどうしたのかな? あいつの事だから無事でいると思うんだけど……ちょっと、心配だな。 そんな事を考えながらも私はどうすることもできないから、とにかくカルロスの後について歩き続けてい た。 あれからどのくらい歩いたんだろう。 しばらく歩いたあとに私達二人は『発電室』というプレートが付いている扉の前に立っていた。 小さなその扉にはカギは掛かってはいなかったんだけど、懐中電灯が薄暗く感じ始めていたこともあっ て、とにかく非常用の懐中電灯を探すためにその部屋に入る事にしたの。 室内は薄暗くてカビ臭かったけど、広さは大人が三人くらいテーブルを囲んでおしゃべりできるくらいのス ペースと、他には"小型発電機"って機械が備え付けられていた。 壁にはその発電機の事について注意書きが貼ってあり、英語のあまり得意じゃなかった私にはチンプン カンプンで、専門用語らしいと解っただけでも自分を誉めてあげたいくらい難しい感じがした。 カルロスはそんな張り紙をジッと見つめたあと、「細かい操作方法は……ここが隔離されたら直ぐに発電 機を始動せよ」と書いているって教えてくれた。"ここが隔離されたら"ってところが引っかかるんですけども …… ドルルン!! 突然、そんな音がしたから後ろを振り返ってみると彼が発電機を始動させた音だった。 「よし、エンジンは掛かったみたいだぜ!!」 カルロスがどうやら発電機を動かせる準備をしていたようね。 うまく動くようになったおかげで、電力が供給されて換気扇や部屋の明かりを取ることができたの。私の 方はというと工事用の物で大きいタイプの懐中電灯を見つけたわ。 この先の道で心強い味方になるんじゃない? 今度はもっと明るいはずだし、それに充電式で予備のバッテリーが幾つかあったから電池の心配はいら ないし、使いきっても予備の電池があって少しは安心できるはずよ。 「充電に時間はかかりそう?」 「いや、同時に五個充電できるタイプだから一時間くらい休んでいる間には終わると思うよ」 カルロスが最後の一個をセットすると充電器の電源を入れた。 充電器には二つのランプが付いていて、赤いランプが青くなれば終了だと教えてくれる仕組みになってい た。 「美沙はここにお姉さんを捜しに来たんだよね?」 「そう、私のお姉ちゃんは考古学者の卵たちなんだけどね。今じゃ何処に行っちゃったことやら……こんなあ りさまなの」 テーブルに着いて一息ついている私はカルロスに疲れた感じで力無く答えた。 きっとこの何処かで生きてるにちがいないって思うのだけど、こんな状況だとますます不安が募るばかり だよ。 それにしても広いジャングルの中をこんなに歩き回るなんて思いもしなかったな。ある意味、「遺跡に行け ば居る」なんて甘い考えで来ちゃったこと、ちょっとだけ今は後悔してるんだ。 あんなに健太には反対されてたのに私ってば持ち前の強情っ張りでそこを無理に押し切ってここまで来ち ゃったのよね……。 しかも、健太と離れちゃうなんて……最悪のダブルパンチで災難続きだわ。 事務所にあるような安っぽい椅子をキィキィ言わせながら、私はカルロスの方を見ながら考えていた。 そういえばカルロスもお姉ちゃんたちをさがしてるんだたっけ? なぜだろう?だって、お姉ちゃんの友達に外人は居なかったはずだし、それにナントカって会社の人らしい ことを話してなかった? 「ねぇ、カルロス。カルロス達は何故お姉ちゃんたちを捜してるの?」 「美沙。それ、初めて会った時に言わなかったっけ?」 「ええ?聞いてないよー」 私は『ぶーっ』と頬を膨らませながらカルロスの方を見た。 カルロスは私なんかお構いなしといった感じでバッテリーの充電状況の確認なんてしちゃってるし・・・ムカ ツクぅ!! 「美沙、どうやらこっちは準備OKらしいぜ」 こっちは全然納得いってないっての! 「全然、質問に答えないんだ」 「当然、美沙には関係ない事だからね」 うっ、それ言われると何も言えないじゃない。 「それに答える、答えないは美沙も同じだろう?ただ、美沙がお喋りなだけさ」 そう言って、大きめのライトを手にするとカルロスは入り口に近づいた。 その時だったの。 『オオゥ…オオォオウ…』 何かのうめくような声が聞こえてきた。 「な、何の声?もしかして猛獣?」 「わ、解らない……でも、この声からして結構な数は居そうだな」 た、確かにそんな感じの声が外からは聞こえて来てるんだけど、この部屋の中に居てもハッキリ聞こえて くるんだから、かなりの数だって事は私にも分かるって。 しかも、だんだんこっちに近づいてきてるんじゃない? 「外に出るのは危険な気がするのは俺だけかな?」 カルロスが私の顔を見ながら言った。 「な、何バカな事言ってるの?気がするんじゃなくて、危険そのものなんじゃないの?」 外の音が騒がしくなったと思った瞬間…!! ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!! 「ほら、危険だ!!」 今、直ぐ目の前で鉄の扉に何かがぶつかってるのよ!! なに呑気なこと言ってんのよ!! カルロスはガチャッとカギを掛けると、背中に背負っていた小型マシンガンを構えた。 ちょっと、ちょっと冗談でしょ?そんな物をまさかこんな狭い場所で撃ちまくっちゃう気じゃないでしょうね …… ガチン!! 『安全装置』ってのを外すところを見ると、カルロスはかなり本気で打つ準備をしてるよ!! 「この通路を行くか、それとも別の通路を探すか…だよな」 ドゴッ!!とひときわ大きな音が立った後は、意外な事にシンと静まり返ってしまったのよ。 「ど、どうしたんだろう……通り過ぎちゃったのかな?」 私がそう言って少し後ずさると机の上に置かれていたステンレス製のコップが私のお尻に当たって床に落 ちる。 そして、そのコップが「カツーン!」って心地よい…のかわかんないけど、とにかく音を立てたと同時に『ド ンッ!!』て勢い良く扉が打ち破られてしまったのよ!!
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Update:2003.1.26